押弦時のテンションと、鳴り方を改善したいとの事でGibsonのサザンジャンボをお預かりしました。
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=678x10000:format=jpg/path/sf119bc3921851580/image/i613d25e16d6f3195/version/1618745123/image.jpg)
ナット溝の高さが1フレットよりだいぶ高かったので、ナット溝修正は必須の状態でした。
それ以外に気になったのがネックの状態。確認してみると12フレット〜14フレット付近をピークに波打ちの状態が見られました。
実はこれアコギによくある反り傾向です。原理を簡単にご説明させて頂く為に、製作時のネック取り付け角度のご説明からさせていただきます。
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=863x10000:format=jpg/path/sf119bc3921851580/image/i3cca1ccb83221622/version/1618869672/image.jpg)
製作時はボディトップ面とネックは平行ではなく、ジョイント部分から角度がつくようにネックセットされています。
これはブリッジ部で弦高を確保する為です。イラストは少し極端に描きましたが、指板がジョイント部から『へ』の字に曲がるようになっています。
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またまた極端に描きましたが、経年変化でこのような状態になります。(こうなっているアコギ本当に多いです)
ジョイント〜ネックエンドまではボディ上にあり、ほぼ反りが出ないので真っ直ぐ。一方、ヘッド〜ジョイントの14Fまでは反りが出て、このよう感じに。トラスロッドが一番効くエリアが7フレット付近なのに対し、ジョイント部寄りをピークに反ってしまいます。これではトラスロッドで反りを調整しても波打ちしたような状態は改善されません。実はこれ、エレキギターだと『元起き』や『ハイ起き』と呼ばれる症状と同じです。ジョイント部分から急にネック材の質量が少なくなるので、そこから急に反ってしまうという、ネックの宿命とも言える反りかたです。こうなるとフレットすり合わせを行った方が良い場合がほとんどで、今回もご相談の結果フレットすり合わせも行うことに。
これを理解した上で最初の画像を見ると、まさにそのような感じになっているのがお分かりいただけるでしょうか。
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=678x10000:format=jpg/path/sf119bc3921851580/image/i546f96d10ac66186/version/1618745248/image.jpg)
微妙なニュアンスが求められるフレットのすり合わせなのでチューニングをしたまま高さを揃えていきます。
ナットをリフトアップして弦とフレットの間に隙間を設け、粘着サンドペーパーを貼り付けたアルミのLチャンネルでフレットの頭を削っていきます。一度完全なストレートを出してから少しトラスロッドを緩め、理想的な僅かな順反り状態を作り出していきます。
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12フレット付近はこのくらい削ります。0.3mmくらい削っています。
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最終フレット付近はほぼ触りません。
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フレット頂点の丸みも出し直し、磨き上げます。
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すり合わせによって少し低くなったフレットの高さに合わせてナット溝も調整します。
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=678x10000:format=jpg/path/sf119bc3921851580/image/i31197ae9b8c04415/version/1618746591/image.jpg)
サドルの頂点の調整、ネックの反りの調整も行い、万全の状態に。
サドル高を少し高め、ナット溝をやや低めにした上で12フレット上で2mm〜2.5mmの弦高にセットアップしました。
こうすることでローフレットの弦高は低めですが、弦振動のピークである12フレット付近に十分なクリアランスが取れるので、押弦のし易さと鳴りのダイナミクスの両方を確保できます。