2021年最初のオーダーベース製作④

早速ですが、完成写真です。いつもお願いしているn-fotoの原田さんに撮影お願いしました。(https://n-foto.com)

かっこよく撮っていただいてありがとうございます!

 

北海道産のケヤマハンノキボディ、1ピースのカーリーとスポルテッドが美しいです。輸入材でいうとアルダーが一番近いですが、今回使用したハンノキは平均的なアルダーより軽量でした。(スポルテッドなこともあると思います)

プレーンな杢もアルダーより表情が豊かでナチュラル仕上げでも非常に映えます。今回の個体でいうと1弦側は比較的プレーンな杢のイメージです。

バック面はパーツが少ないので木目が更に強調されます。

 

ネック材のマカバもダイナミックな杢が出ています。ネックの反り対策として、太めのグリップ仕上げ、カーボンロッドを仕込むなど行なっております。

 

バックパネルは磁石で固定してあるので着脱が容易にできます。

ヘッド部はエクステンダーを4個付ける為に1からデザインしました。

シェイプはもちろん、ヘッドの角度、ペグの落とし込みの深さ、全て綿密にシミュレーションしエクステンダー使用時にスムーズなチューニング変更がなされるようにしました。ヘッド突き板部分もナット側では厚みを変えたりもしています。

また、ナットへの負荷を軽減する為に取り付けたテンションピンはHipshot製のものを加工しました。本来はナット底面に弦を抑える為に使いますが、今回はペグ方向へ導く為に横方向に効くようになっています。

 

そして今回初使用のRichlite指板。今回はR-50という品番で、リサイクルダンボールとフェノール樹脂からなる素材です。指板表面は塗装不要で、レモンオイルなどで保湿する必要がありません。

かなり重量がある素材で、比重は1.0を超えます。エボニーで0.8〜くらいなので指板材としては重量級です。

ネックの鳴りをタイトにしたい、ボディ鳴りを最大限生かしたい、サスティーンを長くしたい方には向いている素材と言えます。

 

エボニー、ローズウッドは年々資源が枯渇しており、リサイクル素材から成るRichliteはその救世主となり得る存在なのかもしれません。

そしてヘッド裏です。私はもう見慣れましたが(笑)、初めてご覧になる方は驚かれるかと思います。

トラスロッドの調整部分は指板エンド部分にホイールナット仕様で取り付けてあります。

スラップ時に親指が入り過ぎてしまうことがあるので、カバーを取り付けてあります。

ネックジョイント部分。最終フレットまでしっかりと押弦できるようにボディの落とし込みも行いプレイアビリティにも考慮ました。

先日無事納品しまして、オーナー様にも大変喜んでいただけました。

 

 


 

今回使用した北海道木材、Richliteは持続可能な素材として注目しています。

特に北海道木材を使用する事は

・輸入材に比べて輸送時に発生するCO2を大幅に削減することができる

・資源を循環させ、地域の林業を守り、森を守ることができる(私が購入しているのは環境に配慮した伐採方法を行なっている林業事業体のみです)

・楽器用の木材として音響的に魅力的。まだまだ使用したことがない樹種があり開拓の余地がある

 

楽器として合格レベルの乾燥材を安定して入手することは現状難しいですが、そもそも大量生産の予定も無いですし不安定な供給すらストーリーの一つだと思っています。山の都合にこちらが合わせるくらいの気持ちでいます。

安定供給を望んだ結果が現場での乱獲を導いてしまう事は容易に想像できますし。

 

2021年4月現在、新規オーダーの受付は停止しておりますが、北海道木材をメインにした新シリーズ、ラッカーやウレタンのような有機溶剤を使った塗料を廃止し、シェラックや自然塗料に切り替えた後、オーダー受付を再開する予定です。

 

輸入木材や有機溶剤を完全に悪だとは思いませんが、今後は地球の未来を考えた持続可能なギターつくりというものを真剣に考えていきたいと思っております。