楽器製作で僕が考えていること、やっていること①

当工房のオリジナルベースDoradoを例にとって、今まであまり触れていなかった製作に関することをご紹介していきたいと思います。

まずは、製図です。

製図はPC上で行います。

Illustratorという描画ソフトを使用しています。

 

 

とても便利なソフトで、「ボディ外周のライン、やっぱりさっき描いたラインのほうがいいや」「ピックアップ10°傾けたい」なんて時にすぐ対応できますし、色で悩んでいるときなんかもクリック1つ(いや2つか?)で変えられます。

 

とにかく手書きの製図に於ける、消して書き直すという手間が大幅に省けるのです。

違う製図ですが、これはスケールやジョイント位置によってどのようにバランスが変わるかをシュミレーションしているところです。

データ上は実寸になっていますのでプリンターで出力すれば、実際のサイズ感もすぐに解ります。

これは完成のイメージイラストで、オーダーの打ち合わせの時に描きます。

 

打ち合わせ中に仕上がりイメージを共有できるので、お客様にとても好評です。

製作の話に戻ります。

まずは製材です。

ある程度のサイズにカットされたものを木材屋さんから仕入れ、楽器のサイズに合わせて加工していきます。

 

僕は敢えてひと手間かかる状態のものから仕入れる事が多いです。

 

有名モデルのコピー等は、専門業者から木工がほぼ終わった状態のものを購入することも可能なのですが、お客様の希望がある場合を除いて絶対にそれはしません。

この工程を自分で行うことで木材の「クセ」の様な物も見えてきますし、自分の技術の向上にもつながります。

それに、業者から仕入れたのではハンドメイドでやっている意味が薄れてしまいます。

 

あと、木材を選ぶ選択肢が増えるという意味もあったりします…(木、大好き!!)

 

次は、トラスロッドの溝を掘っているところです。

 

僕は主にトラディショナルなタイプのトラスロッドを使っています。

 

 

それには2つの理由があるのですが、1つ目は「音が良い」と思うからです。

トラディショナルなタイプのトラスロッドは、常にネック内部でトラスロッドとネックの木材が密着するような構造になっています。

それに対し、ダブルアクションのいわゆる両効きといわれるトラスロッドは、トラスロッドを効かせたときにどうしてもネック内部の隙間が広くなってしまいます。

僕自身どっちも使ったことがあるのですが、前者のネックのほうがタイトな鳴りになると感じます。ネック内の空洞が少ない為、しっかりと振動を伝えているのだと思います。

 

2つ目の理由は、ロッドの効くポイントを自分で操作できるからです。

木材の剛性、グリップシェイプ、ジョイント位置等の違いにより、ネックの反りのピークとなる部分は様々です。

楽器が完成した時に、一番効率よくネックの反りが調整できるようにトラスロッドの効くポイントを自分で決められるのです。

軟鉄製の鉄芯にネジを切ったものをネック内部に『たわませて』仕込むというシンプルな構造が故に成せることだと思います。

 

ただ、薄いグリップに仕上げたい場合などは両効きのトラスロッドほうが構造上有利なので、実際どちらを使うかはケースバイケースです。

ネック内部に仕込んだトラスロッドの上からメイプル材で蓋をします。このクランプの締め具合なんかもとても重要です。

 

ギターはネックが命です。

ここまでの工程をしっかり丁寧にやるかどうかでギターの寿命が決まるといっても過言ではないと思います。

ネックとボディの接合部を加工しているところです。ここの加工精度も音にとても影響するところです。

 

タイトに仕上がっていればタイトな鳴りに、ルーズに仕上がっていればルーズな鳴りに。

ルーズといっても、ゆるゆるではありません。

欲しい音によって1mm以下の範囲で調整します。

今回はタイトに。

この写真、接着もネジ止めもしてないんです。

コントロール部分をハンディルーターと呼ばれる機械で掘っているところです。

 

製作する楽器に合わせて「型」を、手作業による削り出しで製作します。

 

フルオーダーの場合でもすべてワンオフで製作しますので、ミリ単位で調整したぴったりな加工が可能です。

 

 

削り残し?の様なステージみたいな部分が残っていますね。

プリアンプが乗る場所として敢えて残しています。プリアンプが乗っている画像は次回ブログにて掲載します。

ボディのアール部分の仕上げです。

 

スクレイパーや紙やすりを使い滑らかに仕上げていきます。

細かい番手の紙やすりで磨き上げ、木工は終了です。

 

次回は塗装~組み込みについて書いていこうと思います。